「団地でオモシロイことがしたい」人がぞくぞく集まる茶山台団地。注目の「ニコイチ」の募集開始です
大阪府堺市の泉北ニュータウンにある大阪府住宅供給公社の団地、茶山台団地。ここでいま、団地ならではの良さを活かした様々なコミュニティ活動が生まれています。そして今年度も、向かい合う2部屋をつなげて借りられる人気の「ニコイチ」の募集が12/25にスタート!今回は「ルームシェア専用」というユニークなお部屋もあるんです。ぜひ注目してください。…
「団地」の価値を見直し蘇らせる再生プロジェクトが、全国で始まっています。「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞きます。”団地家”の吉永健一さん、今回は、団地愛好家として知られるけんちんさんにお話を聞きに行ってくれました。
text : Kenichi Yoshinaga
団地を気に入って住んでいる人々がみんな小さいころから団地が好きだったということはないでしょう。では団地住まい予備軍はどのように団地の魅力に気がつき住むようになるのでしょう。今回は一戸建て暮らしの後、団地住まいを始め現在では関西団地界の生き字引とまで呼ばれるようになったけんちんさんにお話をうかがいました。
けんちんさんは団地好きのみならず、団地関連職員にも知られる団地愛好家です。団地に関する豊富な知識と団地住まいの経験を駆使した団地啓蒙活動を行っています。団地住まい歴は今年で14年。そんなけんちんさんも最初から団地好きだったかというとそうではないようです。
「最初から団地に住もうと思っていたわけじゃないんですよ。 社会人になるまで育った家は戸建てでした。就職後1年間住んだ寮を出て賃貸住宅を探していたなかにたまたま団地がありました」
調べてみると都心にもいくつかURの団地があることに気がついたけんちんさん。立地がいい割に家賃が安かったので窓口に話を聞きに行きました。そこで聞いたのは意外な言葉でした。
「窓口で入りたい団地の空きを尋ねると全く空いていないという返事でした。空きまくってるイメージがあったのでびっくりですよ。そこではじめて団地って人気があるんだと知りました」
団地は知る人ぞ知る人気の賃貸住宅だったのです。空くことはないかと尋ねると全然空かないのであきらめたほうがいいと言われたけんちんさん。逆にそんなに人気なら絶対住んでやると心に決め、せっかく住むならレアな団地をとURのホームページを監視し続ける毎日が続きました。
「半年粘って北堀江団地に住むことができました。間取りは2Kで家賃は45,000円、最寄は大阪市営地下鉄の西大橋か四ツ橋。都心だし当時は1階にスーパーが入っていたので生活するにも便利でした。古い団地だけどエレベーターはついていたし、冬は戸建てより暖かくて感動しました」
北堀江団地に4年住んだ後、結婚を機に引っ越した先も団地でした。お子さんが産まれて子育て環境のよさを実感しているそうです。
「ここ、鷺洲第二団地は子育てするにあたっては何も言うことがないですね。団地内に保育園も小規模保育ルームもあるし、敷地内には車が入ってくることがないので安心です」
団地のいいところは部屋はもちろん団地全体で暮らしやすくつくられていることです。
「集会室がめっちゃ便利ですよ。お金を取らなければいろんなことに利用できます。たとえば親子で集まってパーティーとか。敷地内の緑も同様にきちんとメンテナンスされています。
この環境は戸建てや民間の賃貸住宅ではなかなか手に入れるのは難しいと思います」
団地に住もうかなと思うとどういう住民が住んでいるかも気になるところ。
「長く住んでいる人が多い印象ですね。うちの両隣は15年以上住んでいる方です。最近は若い人も増えて年齢層がバラエティに富むようになりました。高齢化高齢化と言われてるけど、この団地が気に入って住んでいれば自然とそうなる。それは人気があるからです」
鷺洲第二団地には自治会がないけれども町会主催でお花見会や夏祭りは毎年行われているそう。
「ごみ当番や草刈当番があると思われているけどそれはURから委託を受けた業者がやってくれます。ガチガチした自治会活動はないですよ。」
住まいとしての団地のよさに気がついたけんちんさんは周りの人たちに団地を勧めていきます。けんちんさんのすすめで団地住まいを始めた人はなんと200人以上。最近のおすすめ団地を聞くと桃山南団地を挙げてくれました。
「ほどほどに都心部に近い、京都の別荘的な団地です。自然が豊かだからか渡り鳥の中継地点になっているそうです。優秀なスーパーもあり、最近はエレベーターの設置し始めているので高齢者や小さなお子さんがいる家族にもおすすめです」
最近この団地に住み始めた人の話ではいままで住んだ賃貸の中で一番住み心地がいいのだとか。都心からはちょっと離れたところに穴場的にいい団地が結構あるのです。
けんちんさんは関西団地界の生き字引と呼ばれています。その知識の広さ深さ正確さは研究者や団地職員も一目置くほどです。
「最初に住んだ団地が面白かったんですよ。屋上に行くとね、ジャングルジムとブランコがある。マンションの屋上に上がれること自体珍しいのに遊具があるんですよ(笑)これはなんだろうと公団の歴史を調べ始めるとこれがまた面白い。真四角な建物をずらっと並べただけかと思ったらそこにはいろんな工夫がこめられている。インターネットから大学図書館までとにかく調べつくしました」
住んでみてわかった住まいとしてのよさ、調べてみてわかった建物のすばらしさ、それら団地の魅力をより多くの人に知ってもらいたい。けんちんさんはそんな思いから数々の団地啓蒙活動を行っています。団地イベント、団地ブック年1冊、団地ラジオ、団地ツアー、メディア取材対応などなど。そして普段からいろんなところで団地のよさの話をすることも欠かしません。
団地の啓蒙活動をすすめればすすめるほど団地はよく知られていないことを痛感するそうです。
「団地がダメといわれはじめたときに『○○団地がダメ』 という言われ方はしていなかった。色々な種類の団地があるのに団地全体が否定されてしまった。これ大きな問題だと思っています」
団地の魅力以前に実は団地なのに団地と知られていない団地もあるのだとか。
「団地に住んでるんやっていいなーといっていた知り合いの家に行ったら神戸市公社のテラスハウス団地。一戸建てと思い込んでいたようで、ここも団地ですよって言ったらびっくりしていました(笑)」
団地に住んでいるのに自分の家が団地と思っていない人もいるというのは驚きです。実は実家が団地だったという人もいるかも。そう考えると潜在的団地ユーザーは思いのほかいそうです。
最後に今後の啓蒙活動について聞いてみました。
「団地クラスタ以外の分野の人も団地に巻き込みたい。最近はボードゲーム愛好家の方々に団地を広げようとしていて、団地のボードゲームをつくれないかと考えています。これからも団地のよさをゆるーく啓蒙していきたいです」
団地のよさを知るということは住まいの選択肢が増えること。それが単に面白い!がはじまりでもいいので団地のよさに気がついて欲しい。それがけんちんさんはじめ団地愛好家の願いなのです。
吉永健一
吉永健一
団地に取り憑かれた建築家。
団地のリノベーション設計とともに団地専門の不動産屋「団地不動産」としてUR賃貸住宅のあっせん、分譲団地の仲介を行う。全国団地愛好家集団「プロジェクトD」メンバーとして団地の魅力を世に伝えるイベント企画出演、記事執筆もこなす。