「良理道具」に見て触れて、使って選べる「かまあさ祭」
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プロ向けの料理道具の問屋街として古くから賑わう台東区の合羽橋。最近では、特にスカイツリーの開業後、一般の方から海外からの観光客まで多くの人々が訪れる、注目のスポットとなっています。その合羽橋に明治41年から店舗を構え、「本当に良い道具が見つかる」と人気の釜浅商店におじゃましてきました。
text : Miha Tamura / photo : Takuya Kanai
この場所で、お釜の専門店としてスタートした「釜浅商店」は今年で創業109年。時代のニーズに合わせてガスレンジなどの厨房機器、南部鉄器、庖丁など料理道具全般を扱い、目利きの「案内人」がひとりひとりのニーズに応じて提案してくれるお店です。
「それまで、合羽橋ってプロ向けの道具街で、通路が狭く商品がうず高く積みあがっていたり、一般のひとがふらっと入って買い物を楽しみにくい状態だったんです。そこで、初めて入ってきた方でも奥まで見渡せて、商品がどこにあるかわかりやすいように、お店のつくりを一新しました。お仕事の方にも、一般の方にも来やすい、買いやすい店づくりを心がけています」
店舗の什器は、お釜をイメージしたもの。手に取りやすく、配置も工夫されているため、思わずあちこち隅々まで見て回りたくなります。
取り扱う商品はサイズ違いも含めると1万点以上にも及びますが、さらに、店頭にないものを取り寄せることもあれば、お客さんのニーズに合わせ、メーカーとの間に立ってゼロからあつらえていくことも多いのだそう。
おもしろいエピソードとして教えていただいたのは、よく居酒屋さんなどで出てくる「釜飯」を考案したのは、釜浅商店の2代目社長というお話。飲み会の締めにちょっとだけ、炊きたてのご飯が食べたい、そのために釜のメーカーと相談して小さな1合炊きの釜を考案しました。食べること、美味しいものが大好きで、アイディアマン。釜浅商店は、そんなスタッフの方がたくさん集まっているお店です。
釜浅商店の掲げるブランドコンセプトは、良い理(ことわり)のある道具、と書いて「良理道具(りょうりどうぐ)」。
「良い道具には、なぜそういう形になっているのか、どうしてそういう作られ方をしているのか、必ずちゃんとした理(ことわり)があります。主には国産のもので、職人さんがひとつひとつ手作りしているもの、昔から日本で親しまれている昔ながらの道具が中心ですが、国産にこだわっているわけではなく、本当に良いと思う道具を、それに込められた想いとともに、職人さんとお客さんとの間に立って伝えていきたいと思っています」
選ばれたとっておきの道具と、そのストーリーを教えてもらいました。
一般の行平鍋はプレスの抜き型を使い、装飾として打ち目をつけているものが多いそうですが、こちらは数千回ひとつひとつ叩き締めて打ち目をつける、本来の作り方がとられています。釜浅商店のオリジナルとして、把手を持ちやすく、注ぎ口の水切れをよくするなどの工夫も加えられています。
「厚みも3mmあってかなり分厚いので、火の通りがやわらかくなるんです。ふつうの鍋だとどうしても焦げ付きやすくなってしまうんですが、これだと煮物も中心までじっくり火が通ります」
「高さをすこし低く、浅くしてあるので、ガスレンジでも昔のかまどと同じように、しっかり炎が釜の底部を包み込むんです。それによって対流が起き、鉄の力でうまみがひきだされてもっちりした美味しいご飯が炊けます。IHでも使えるんですよ」
「一般の硬いたわしは、海外のパームやしでできています。髙田耕造商店は、今では貴重なシュロ山の再生から始めるなど、国産のシュロを使ったものをはじめとした質の良いたわしを作っています。鉄器を洗うときは油分を残し、なじませるため洗剤を使わないんですけど、これならぴったりなので、鉄器を買う方には合わせておすすめしてます」
鉄器って、使ってみたいけれどお手入れが大変そうで敷居が高いな、と思っていた私。実際に触れてみると本当にやわらかくて、これがあるなら憧れの鉄のフライパンでハンバーグが焼けちゃうかも!と、たわしを見ながらだんだんお腹が減ってきました。
傷つけにくい性質から、石のお風呂を洗うのに使ったり、ボディタオルとして使う方もいらっしゃるそう。
「焼き網が2種類ついていて、赤身は鉄板でじっくり、ホルモンはステンレス網で強火で焼くのが美味しいそうなんです。ゆうじさんでも実際にこのロースターを使っているんですよ」
う〜ん焼いてみたい。やっぱり、道具を見ているだけなのによだれが出てきちゃいますね。
「もともとは仕事用に作られているものだから、ご家庭で使っていただく場合にも、丈夫で長く愛用できるのも特徴です。それが合羽橋に道具を買いに来る楽しみのひとつだと思うんですよ」
とお話してくださったのは百合岡さん。
道具を買うときには、この先ずっと長く使うことを見越して、サイズや使うシーンなど、自分に本当に合うものを選ぶのがポイントだといいます。
「お店に来て、一番人気はどれですか?という聞かれ方をすることもあるんですけど、私たちは、これが人気です、というようなおすすめの仕方はしていなくて。お客様ひとりひとり、使い方も、求めているものも違うので。自分がいつも使うシーンを想像してもらって、何を作りたいか、どういう量を作るかをお聞きしながら提案することが多いんです」
たとえばフライパンなら、釜浅商店オリジナルの鉄のものはたしかに良いけれど、使うひとによってはより軽いものや扱いやすいもののほうを薦める場合も。また、フライパンや鍋を探してやってきたけれど、オーブンやキャンプでも使える浅鍋や、煮炊きにも使えるご飯釜など、より様々な用途に使えるものを、これだ!と買って行かれる方もいらっしゃるそう。
「実際に見て、手に取って選んでほしいですね」
そんな釜浅商店の想いが溢れているな、と感じたのが、庖丁専門のフロア。
写真を撮らせていただいているあいだも、ひとつひとつの道具に対して、「ここの触り心地が本当にいいんですよね〜」「この道具は、こういう使い方ができるんですよ」と、話の尽きることがなかったお二人。
「わくわくするものが多いので、働いていても、本当に楽しいです」
釜浅商店では、そんな美味しいものと良い道具が大好きなお店のひとたちに、じっくり相談しながら自分にとって本当に使いやすいものを見つけることができる。そんな、素敵な出会いの待っている道具店でした。
釜浅商店 合羽橋 料理道具フロア
東京都台東区松が谷2-24-1
03-3841-9355
営業時間 10:00〜17:30
定休日 なし(年末年始をのぞく年中無休)
http://www.kama-asa.co.jp/
2017年10月9日(月・祝)~11月5日(日)まで、釜浅商店 庖丁フロア2階にて、「かまあさ祭」が開催されます!
詳細はこちら:https://www.goodrooms.jp/journal/?p=20173