カラフルでハッピーなふたりの部屋
写真家・ライターの大山顕さんに、ちょっとおもしろい撮り方で、無垢床リノベーション「TOMOS」のお部屋と住んでいる人の「平面図」を撮ってもらうシリーズ。 今回は、20代の仲良しご夫婦、ティールさんのお部屋をご訪問。とってもカラフルで元気の出るインテリアですが、色のテイストがまとまっていて居心地は抜群。ついつい大山さんと二人で長居してしまいました。 (編集部)…
写真家・ライターの大山顕さんに、ちょっとおもしろい撮り方で、無垢床リノベーション「TOMOS」のお部屋と住んでいる人の「平面図」を撮ってもらうシリーズ。
今回は、ともに建築、インテリア系のお仕事に携わるTさん、Oさんのカップルのお部屋を訪問。
居心地の良いお部屋、大山さんもスタッフも、興味の分野が重なりすぎてすっかり長居してしまいました。
(編集部)
毎回楽しんで「平面図写真」を撮影しているぼくですが、いまちょっと緊張しております。今回ご紹介する部屋にお住まいの男性・Tさんは、建築パースを描くのがお仕事だから。パースとは建築が完成した状態を表現した絵のこと。「いわゆる建築CGですね」とTさん。つまり建物を描くプロだ。きんちょうする!
これまでの平面図写真をじっくり見てもらうとわかりますが、けっこう「ここなんかへんだな」って箇所があるんですよ。この写真、一脚の先に一眼レフカメラつけてそれを天井に押しつけて下に向けて撮ってまして。でかい自撮り棒を掲げて床撮ってるような状態。この状態で一歩ずつ移動して撮り、後で画像編集ソフトでちまちま繋げていくという、ものすごーく原始的なやり方で作っているのです。そうするとどうしても、それこそパース的に変な箇所が発生するんです。ちなみに、だいたい1回で2〜300枚撮って繋げます。今回は272枚でした。
Tさんは、過去の連載を見て「どうやって撮ってるんだろう?」と疑問に思ったそうで、ぼくが撮影する姿を見て「まさかそういう方法とは思いませんでした」とおっしゃってました。ですよね、もっと賢いやり方があるんじゃないかと自分でも思うんですが。
緊張のあまり撮影苦労話なんぞ書いてしまったわけですが、実際にお二人とお話しているときはすごく楽しかった。おふたりともすごくフレンドリーで、すぐに打ち解けた雰囲気に。そして本棚見ると、趣味嗜好がぼくと似てる感じがして嬉しかった! ただ、似ているのはそこまで。ご覧の通りすてきなお部屋。乱雑なぼくの部屋とは大違い。
一緒に暮らしておられるOさんもインテリアショップ勤務とのことで、これまたお部屋のプロですよ。そんなお二人の部屋がすてきでないはずはないですよね。
ただ一方で「片付きすぎてない」のがすごいな! と思った。すごく誤解を招く表現になるんですが、いままで訪問した部屋たちに比べると、なんというか自然体な感じ。いやもちろんすっきりしてるし、これまで見てきたみなさんの部屋が「不自然」ってわけじゃないんですが。
何なのだろう、この不思議な感じ? と考えて思いついたのは、この部屋にはTさんとOさんそれぞれのカラーが絶妙なバランスで共存しているからではないだろうか、と。理想的なインテリアコーディネートは「専制政治」じゃないと実現しない、というのが部屋づくりの最大の困難だと思う。ぼくの部屋も、妻のいう通りにぼくが余計ながらくたや本を捨てていけばすてきになるんだろうけど、部屋の国民たるぼくはそれに従わない。結果、部屋はごちゃごちゃだ。民主制はやっかいだなあ。
ところが、すてきな部屋なのに、TさんとOさんのこの部屋からは「専制政治」の雰囲気がしてこない。これが「片付きすぎてない」の正体なのではないか。ふたりとも各々好きにものを揃えていっているのに、絶妙にバランスしている。そういう感じがしたのだ。
それにしてもいい部屋。リビングと寝室の間に扉がなくて、微妙に袖壁で仕切られている。2面に窓があるのもいいし、キッチンも明るい。「間取り図見るのが好き」というお二人が、一緒に住もうというタイミングでこの部屋を見つけたという。「内見した時は、まだリノベーション工事中で完成していなかったんですが、図面でだいたい分かりました」とおっしゃったのには、さすがプロだなあ、と感心した。
さて、今回のハイライトは恒例の「並べて撮る」でのお話。毎回「何か集めてる/集まっちゃったものありませんか?」とおききしているのですが、今回並べていただいたのは「チケットの半券」。
集めているのはOさんのほう。「前からなんとなく集めちゃってるんですよ」とのこと。美術館、映画、ライブなどさまざまなチケットがあって「あ、これぼくも行きました!」とか言いながら並べる作業は思いのほか楽しかった。「こうやって見るとよくデザインされてますよね」「同じフォーマットのやつに印字してあるだけのチケットは残念ですよねえ」あらためて見るとチケットってなかなか奥深い。
ぼくが感動したのは、チケットには場所と時間が記されている、ということだ。あの日、あの時、あの場所に。こうやって集めて何年かたってから見返すと、見事に人生のログになっている。
で、なにが「ハイライト」だったのか。それは電気グルーヴの映画のチケットが2枚あったことだ。
「一緒に暮らし始めてから、2枚組になったんです」と笑顔で言ったOさん。もちろんTさんの分だ。
誰かと一緒になるというのは、その人と同じ時間同じ場所にいる、ってことなんだよなあ、とあらためて思った。こうやって書くと「そりゃそうだ」なんだけど。それまで別々だったログがある時を境に合流する。それって貴いことだよね。そしてその合流地点になるのが部屋というわけだ。
「もしかしたら知り合う前に同じ展覧会に行ってて、すれ違ってたかもしれないですね」って言ったら、「あー、ぼくもチケットとっておいたらよかったなー」とTさん。
部屋をきれいに見せたいだけの人だったら、チケットをとっておいたりはしないだろう。やっぱりこのお二人の部屋のすてきさは独特だな、と思った次第。
大山 顕
写真と文:大山 顕
“ヤバ景” フォトグラファー / ライター。1972年11月3日生まれ。住宅都市整理公団総裁。出版、テレビ出演、イベント主催などを行う。「”ヤバ景”って何?」「”総裁”っておおげさじゃない?」など各種ご興味がわいた方は OHYAMA Ken.com にいってみてください。
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